大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

メニュー
コラム vol.469-1
  • 土地活用税務コラム

相続税・贈与税の基本(1)相続税の課税の仕組み

公開日:2023/10/31

ひとことで「相続税」といっても、その内容は多岐にわたり、計算も複雑です。多くの財産を保有している場合、子どもに相続した際、どの程度の相続税がかかりそうか、あるいは親の財産を相続する予定だが、きょうだいが多く、それぞれどのような税負担があるのか、など、相続税に関する不安はつきないと思います。国税庁の資料(財産を相続したとき)を参考にしながら、相続税について基本的な仕組みをおさらいしておきます。

財産(遺産)を相続したときの納税額算出方法

亡くなった人(父や母など)から相続人(配偶者、子どもなど)となる人が相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合、相続税の課税対象となります。全体を図にすると以下のようになります。

図1:課税遺産相続の計算

出典:国税庁

正味の遺産額とは、上記の図にあるように、遺産総額と相続時精算課税の適用を受ける贈与財産(※1)の合計から、非課税財産、葬式費用および債務を控除し、相続開始前3年以内(※2)の贈与財産が相続財産へ加算されます。

  • ※1 「相続時精算課税制度」を選択した場合には、生前贈与を受けた財産額が相続財産に加算(基礎控除を除く)される。
  • ※2 相続前3年以内の贈与は、相続人以外の人には適用はない。また、令和5年度税制改正により、この制度は令和6年から1年ずつ増え、令和9年になると7年間に延長される(これによって贈与税を支払っている場合は、相続税額から控除をうけることができる)。

この正味の遺産額から基礎控除額を引いた分がプラスになった場合、相続税の申告と納税が必要となります。基礎控除額とは、相続財産の総額3000万円+(600万円×法定相続人の数)の計算式で算出するもので、相続人が、子ども2人だけの場合は、3000万円+600万円×2=4200万円が基礎控除額になります。
プラスになった分が課税遺産総額となり、この課税遺産総額から相続税が計算されることになります。

相続税の対象となる財産

財産といっても、預金や金融商品以外にもさまざまな財産があります。主に、以下の財産が相続税の対象となります。

  • ・被相続人が亡くなった時点で所有していた財産
    土地、建物、株式や公社債などの有価証券、預貯金、現金などのほか、金銭に見積もることができる全ての財産が相続税の課税対象となります。その際、日本国外に所在する財産も相続税の課税対象となります。
  • ・みなし相続財産
    被相続人の死亡に伴い支払われる「生命保険金」や「退職金」などは、相続などによって取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。ただし、「生命保険金」や「退職金」のうち、一定の金額までは非課税となります。

非課税となる財産

財産のなかには、課税対象とならないものもあります。たとえば、「葬儀、墓所、仏壇、祭具など」、「国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附した財産」「生命保険金のうち〈500万円×法定相続人の数〉の額まで」「死亡退職金のうち〈500万円×法定相続人の数〉の額まで」は、課税対象外となります。

相続税の計算例

実際に、相続税を計算してみます。亡くなった父親の正味の遺産額は2億円、妻と子ども2人が、法定相続分どおりに相続したと想定しています。

表1:法定相続分の主な例

相続人 法定相続分
子がいる場合 配偶者 2分の1
2分の1(人数分に分ける)
子がいない場合 配偶者 3分の2
父母 3分の1(人数分に分ける)
子も父母もいない場合 配偶者 4分の3
兄弟姉妹 4分の1(人数分に分ける)

出典:国税庁

表2:相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超~ 55% 7,200万円

出典:国税庁

まず、課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したとして、それに上記の税率を適用して各法定相続人別に税額を計算し合計します。次に、この総額を各相続人が実際に取得した正味の遺産額の割合に応じてあん分します。最後に、この税額から、配偶者の税額軽減など、各種の税額控除を差し引いて、実際に納める税額を計算します。

図2:相続税の計算例

出典:国税庁

上記の表に、「配偶者の税額軽減」とありますが、相続税は対象者によって、控除される制度がありますので、以下に紹介します。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が1億6,000万円までか、配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。配偶者の生活を守るために設けられた制度です。
ただし、財産を相続した配偶者に相続が発生した場合は、通常の相続税がかかります。これを2次相続と呼びますが、配偶者が多額の財産を相続する場合には、1次相続と2時相続を合わせて考える必要があるでしょう。特に、1次相続と2次相続の期間が短い場合には、注意が必要です。期間が長い場合、その間に、投資などに有効活用することができるのであれば、ひとつの選択肢として考えられます。

  • ・未成年者控除
    相続人が18歳未満の方の場合は、18歳に達するまでの年数1年につき10万円が控除されます。
  • ・障害者控除
    相続人が障害者の場合は、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除されます。
  • ・相次相続控除
    相次相続控除とは、短期間に相続が相次いだ結果、同じ財産に対して課税が重複しないように設けられているもので、10年以内に続けて相続が起こったときに、一定の計算式で計算された相次相続控除額が控除されます。
  • ・小規模宅地等の特例
    相続や遺贈によって取得した財産のうち、被相続人の事業または居住用に使用されていた宅地等が一定の条件を満たせば、その宅地等のうち一定の面積までの部分(小規模宅地)については、評価額が50%または80%減額されます。

相続税の申告・納付の期限

相続税の申告、納付は「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」に行わなければなりません。期限以内に行わないと、税金滞納状態となり、延滞税(利子税)を含めて税務署から督促を受けることになります。どうしても期限内に納められないときは「延納」や「物納」を利用できる場合もありますので、税理士などの専門家に相談してください。

相続した不動産の名義変更(相続登記)

2024年4月からは不動産の相続登記に期限が設けられます。「相続や遺贈によって不動産を取得したことを知ってから3年以内」に相続登記をする必要があります。2024年4月から、それ以前に相続した人にも相続登記は義務化されます。

こうした相続税の計算方法や制度についてあらかじめ知識を持っておくことで、想定外の相続税負担などのリスクをある程度は抑えることができるでしょう。ただし、これらの制度は、条件によって異なりますので、詳しい情報は、国税庁のホームページを確認、または、税理士などの専門家に必ず確認してください。

メルマガ
会員登録

注目
ランキング

注目ランキング